~「指を使って計算」は止めるべき?学具卒業のタイミングと本当の数能力~

「うちの子、計算は速いんです。でも文章題になると手が止まってしまって…」
「そろばんを習わせるか、ピグマリオンにするか迷っています」
「いつまでも指を使って計算していて、将来が不安です」
教室には、こうした「計算」にまつわるご相談が後を絶ちません。
一般的に、算数が得意=計算が速いこと、と思われがちですが、実はここには大きな落とし穴があります。
「答えが合っていればOK」と考えていませんか?
ピグマリオン学院が大切にしているのは、答えの正解・不正解よりも、「どうやってその答えを導き出したか」というプロセス(思考回路)です。
今回は、保護者の皆様から実際に寄せられた質問をもとに、「計算力」と「思考力」の違い、そして学習用具(学具)との正しい付き合い方についてお話しします。
## そろばん(暗算)とピグマリオン、何が違うの?
よく頂くご質問に、「ピグマリオンとそろばんの併用は可能ですか?」というものがあります。
結論から申し上げますと、「目的が全く異なります」。
そろばんは、古くから日本で使用されてきた計算処理のスピードと正確性を高めるための素晴らしい道具です。もし、純粋に「暗算が得意な子にしたい」のであれば、そろばんも一つの選択肢でしょう。
しかし、ピグマリオンが目指しているのは、単なる計算処理能力ではありません。
私たちは、「数の構造を理解し、状況に応じて最適な処理方法を自分で選び取る力」を育てたいと考えています。
例えば、「99+99」という問題を見た時。
筆算やそろばんの頭で「9+9は18、1繰り上がって…」と機械的に処理することもできます。
しかし、数論理が身についている子は、「あ、これは100+100から2引けばいいから198だ」と、瞬時に工夫して解くことができます。
機械的に処理するのではなく、常に「なぜそうなるのか?」を考えながら数と遊ぶ。
この「思考する習慣」こそが、将来、中学・高校数学の難問にぶつかった時に、自力で突破する力になります。
## 「指を使って計算」は無理にやめさせなくていい

「10までの足し算で、まだ指を使っています。やめさせるべきでしょうか?」
この悩みをお持ちの親御さんも多いですが、私たちの答えは「無理にやめさせなくていい(見ないふりをしてOK)」です。
子供にとって指は「一番身近な具体物」です。
「5+3」をやる時に、「5、6、7、8…」と数え足しをしているかもしれません。大人が「ダメ!」と禁止しても、隠れて机の下でやったりするものです。
大切なのは「禁止すること」ではなく、「指を使わなくてもわかる感覚(量感)」を育ててあげることです。
指を使っている時に、「ダメよ」と言うのではなく、「あ、5と3で8だね!」と、数の塊を言葉にして投げかけてあげてください。
頭の中に「5と3が合体して8になる映像」が出来上がれば、子供は自然と指を使わなくなります。
指を使っているうちは、まだその映像が定着していない証拠。焦らず、インプット(量の刺激)を続けていきましょう。
## 学具(積み木やヌマーカステン)はいつ卒業すべき?

ピグマリオンの特徴である独自の学具。「いつまで使い続ければいいですか?」というのも、よくある質問です。
結論は、「本人が『いらない』と言うまで使ってOK」です。
学具は、自転車の補助輪のようなものです。
最初は補助輪がないと走れませんが、バランス感覚(頭の中のイメージ)が育てば、自然と邪魔になって外したくなります。
卒業へのステップは以下の通りです。
1. まずは触れる: 学具を使って「あ、こうなるんだ」と目で見て確かめる。
2. 予想する: 手を動かす前に「これを動かしたらどうなると思う?」と問いかけ、結果を予想させる。
3. 確かめる: 予想が合っていたか、学具で答え合わせをする。
この「予想→検証」を繰り返すうちに、実際の物がなくても頭の中でシミュレーションできるようになります。
「もう頭でわかるから、これいらない!」
お子さんの口からその言葉が出た時が、本当の卒業です。それまでは、親御さんが焦って取り上げないようにしてあげてくださいね。
## 「3桁の計算」でつまずく子の共通点

最後に、少し先の話ですが「2桁まではできたのに、3桁の計算で急にできなくなった」というケースについて。
これは、「計算が苦手になった」のではなく、「2桁までの理解(基礎)が曖昧なまま進んでしまった」ことが原因である場合がほとんどです。
2桁の計算が「暗記」や「テクニック」だけで乗り切れてしまった子は、桁が増えて処理が複雑になった途端にパンクしてしまいます。
もし3桁でつまずいたら、勇気を持って「2桁」や「20までの数」に戻ってください。
遠回りに見えますが、「ドット棒」などの学具を使って、位取りや数の構成をもう一度しっかり視覚的に理解し直すことが、苦手を克服する最短ルートです。
## まとめ:正解よりも「プロセス」を楽しむ余裕を
計算は、速ければ偉いというものではありません。
ゆっくりでも、指を使っても、「あ、わかった!」「なるほど!」と自分の頭で納得しながら進むことが何より大切です。
「思考力」を優先していれば、計算スピードなどの「数能力」は後から必ず追いついてきます。
目先のプリントの進み具合に一喜一憂せず、じっくりとお子さんの頭の中に「数の世界」を築き上げていきましょう。