
「うちの子、計算はすごく早くて、学校のテストもいつも100点なんです」
そうおっしゃる親御さんのお子様が、小学校4年生、5年生になった途端、「算数がわからない」と急激に成績を落としてしまう。これは、私たちが現場で何度も目にしてきた悲しいパターンです。
なぜ、低学年で優秀だった子が、高学年でつまずくのでしょうか?
その原因の多くは、皮肉なことに「早期の暗記学習」にあります。
今日は、一見成果が出やすい「暗記」が孕む大きな危険性と、真の「思考力」との決定的な違いについてお話しします。
## 「計算マシーン」になっていませんか?
九九を歌のように覚えたり、公式を丸暗記したりする。
これは、脳にとっては「思考」ではなく、単なる「データ検索」の作業です。
例えば「サンシジュウニ(3×4=12)」と即答できる子に、「それってどういうこと? 絵に描いてみて」と質問すると、答えられない子が驚くほど多いのです。
彼らにとって「12」は、思考の結果ではなく、反射的に出てくる記号に過ぎません。
これは、意味もわからず外国語のフレーズを丸暗記しているのと同じ状態です。「Hello」とは言えても、会話はできませんよね。
この状態の子は、テストで「3×4は?」と聞かれれば100点を取れますが、「アメが3つずつ入った袋が4つあります」という文章題になると、途端に手が止まってしまうのです。
## 高学年で訪れる「暗記の限界」

低学年のうちは、覚える量も少ないので「暗記」で乗り切れます。
しかし、高学年になり、割合、速さ、比、複雑な立体図形が登場すると、どうなるでしょうか?
公式の数は膨大になり、どの場面でどの公式を使えばいいのかの判断が求められます。この時、根本的な「数の概念(なぜそうなるのか)」を理解していない「暗記型」の子は、完全に太刀打ちできなくなります。
これが、「高学年の壁」の正体です。
「答えさえ合っていればいい」という学習を続けてきたツケが、ここで回ってくるのです。
## 遠回りに見えても、「プロセス」を愛する
では、どうすれば良いのでしょうか?
答えはシンプルです。「答え」よりも「プロセス(考え方)」を重視することです。
ピグマリオンでは、九九を暗記させません。「3×4」なら、「3の塊が4つある」というイメージを頭の中で操作して答えを導き出させます。
暗記より時間はかかります。しかし、この「頭の中で数を動かす訓練」こそが、将来どんな応用問題にも対応できる強靭な思考力の土台となります。
## まとめ:100点満点のテストよりも大切なもの

お子様が問題に取り組んでいる時、すぐに正解を出せることのみを褒めないでください。
褒めたり評価したりする基準は是非たくさん持っておくと良いでしょう。
むしろ、間違えたり、時間がかかったりしても、
「どうやってその答えを出そうとしたの?」
「どんな風に考えたの?」
と、思考のプロセスに興味を持って聞いてあげてください。
本当の知能とは、機械のように素早く計算する力のみではありません。
むしろ機械やAIを使いこなせることがこれまで以上に重要な力になってきています。
機械が得意な分野は任せて、人間が伸ばすべき力を育てる事が大事です。
それは「未知の問題に直面した時に、自分の頭で粘り強く考えられる力」のことです。
目先の100点に惑わされず、一生使える「思考力」を育てていきましょう。
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