ピグマリオンは教育に対する哲学をとても大切にしています。
その中で「教えずに学ばせる」という考えについて少し触れたいと思います。
人類が初めてある知性を獲得したときを想像してみてください。例えば初めて火を起こしたときや1~3を使って4や5を作り出したとき。それらは沢山の経験や試行錯誤を経て、たどり着いた英知と言えるものです。現在ではそれらは知識として伝授されます。「巨人の肩の上に立つ」という言葉の通り、先人の知恵を応用や発展させていくことで人類は進歩してきました。
しかし、幼児教育と早期教育はイコールではありません。どんどん新しい知識を教えていけば良いのではなく、幼児期には自分で作り出すという感覚をしっかり育てましょう。もしかすると幼児教室でやっていることは小学生や中学生になればできることも多いのかもしれませんし、どんどん解答方法を教えた方がすぐに答えを出せるようになります。しかし、教える教育からは指導者を超える人は生まれません。それは道具の使い方の説明を受けた後に「これで自由に何かを作ってごらん」と言われるようなもので、予想を超えるものはあまり出てこないのではないでしょうか。
また、それは現代風に言えば、子どもをプログラミングしているようなもので、入力に対して一定の出力をするだけで、人間性を育てることもありません。特に幼児期の教育において、この視点が欠けることは日本の教育を30年は遅らせることになるのではないか、と危惧しています。
人生において初期の段階でどちらに向いて進むかで、後になってたどり着く場所は大きく異なります。大きくなってから考え方を変えようとしてもこれはとても難しいことです。数の概念や幾何学の能力など、先人が生み出した英知を単なる知識として伝授せずに、あえて先人と同じような苦労に取り組むことで、自分の持つ能力で創意工夫して新しいものを作り出す、と環境や経験を与えたいのです。わからないからと言って教える必要もありませんし、怒る必要もありません。正解を出したりできるようになったりすることではなく、そのような状況下に身を置くことも大事な目的です。
教育は子どもの人生を豊かにするためのものです。思考力(自分で考える力)という言葉になると使いまわされた言葉のように感じられますが、ピグマリオンが考える思考力とはそこからさらに広げて、自分の力で解決するという姿勢や心構えであり、他者へ依存する心をなくすことであり、学ぶ楽しみを知ることであり、人生を創造する力でもあります。高い能力と人間性を兼ね備えた一流と言われる人物。彼らは周囲の人や社会のために生き、成長することに喜びを感じ、常に新しい自分を作り出します。一握りの天才のように感じられるかもしれませんが、それが正常や普通と言えるような世の中になれば素晴らしいことだと思いませんか。これが理想のように聞こえるのは残念ながら大半の人はそうでないからなのかもしれません。だからこそ、教育が大切なのです。
ピグマリオンに関心を持っていただいた方にはぜひこれらの点を知っておいてもらいたいと思います。何故なら多くの親は教えられる教育を受けてきているので、何度「教えない」と言ってもほぼ必ず教えるからです。親自身も教わろうという姿勢ではなく、自ら学ぶという姿勢をピグマリオンで身に付けていただければ幸いです。