2026年07月02日

【ブログ】数量感を育てる

幼児期の数の学習において「数量感」という言葉があります。この感覚があればこそ数の意味を理解することができます。著名な数学者である岡潔が「数は量の影」という言葉を残しているように、現実の世界に何らかの量が存在して初めて、数という記号の意味が成り立ちます。私たちが普段使っている位取り記数法においても、三千という数の読み書きは数と量の関係をそのまま表しています。量とは単位と言い換えることもできます。たとえば三千円は千円が3つある状態であり、3mは1mが3つ、5㎏は1kgが5つあるということを示しています。このように、千やm、kgといった具体的な量という概念を正しく理解できることは、数の学習を進める上で非常に重要です。単なる記号の羅列として数字を暗記するのではなく、その背景にある実体の大きさや重さを伴って理解することが求められます。ペーパー上の数字だけを追うのではなく、日常生活のなかで実際に量を感じる経験が世の中を数学的に理解する土台を形作ります。

しかし幼児から小学校低学年頃の子供は、この量の概念をまさにこれから習得していく発達段階にあります。そのため、大人が思わぬところでつまずくことが少なくありません。たとえば200円を表すときに、全体でいくらかと聞かれれば200円と正しく答えられますが、百円玉が何枚あるかと聞かれると、実物が目の前にない場合は200枚と答えてしまうことがあります。100が2つ集まると200になるという関係性が咄嗟に出てこないのです。これは頭でわかっていながら単に正しい言葉が出なかった可能性もありますが、100×2=200が等しいという根本的な理解が定着していないケースが大半です。単位換算で1mが100㎝であると知っていても、3m50㎝を350㎝と答えられない場合なども同様です。算数の学習においては、表面的な言葉の暗記だけでなく、量と量の関係性や等しい量についての具体的なイメージを頭の中で明確に思い描けることが不可欠となります。

そのような数量感を家庭で養うための効果的な方法として提案したいのが、声に出して数字や式を読み、声に出しながら数字や式を書くという取り組みです。非常に単純なことのように思えるかもしれませんが、これだけで数字の構造や読み方の理解は飛躍的に進みやすくなります。言葉を覚えたての2~3歳の頃は何でもよく声に出していたと思いますが、年齢が上がってくるとそういう場面を見かけなくなっていきます。
しかし、文字を読んだり書いたりするためには、まず対象をしっかりと目で捉えなければなりません。さらにそれを声に出すためには、自分が目で見て手で書いている情報を脳内で一度整理し、音声として出力するという複雑な処理が必要になります。英語学習において単語を声に出した方がより五感を刺激するため定着しやすいとされているのと同様に、幼児期の学習においても視覚と聴覚と触覚を同時に使うことは非常に有効です。脳内に複数の刺激を同時に与えることで、抽象的な数字が具体的な量感を伴った生きた知識として子供のなかに定着し、「知っている」から「できる」への架け橋となっていきます。